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2023.12.08ACS動物外科クリニック

犬の膝蓋骨脱臼について|パテラの手術法は?

膝蓋骨脱臼 (通称、パテラ)とは、膝のお皿である膝蓋骨という骨が何らかの原因で正常な位置から外れてしまう(=脱臼)病気です。正常な膝蓋骨は靭帯や腱によって後ろ足の動きと連動しており、膝を曲げたり伸ばしたりする時に筋肉の収縮をスネの骨に正しく伝えるための滑車の役割を果たしています。

 

膝蓋骨の脱臼を何度も繰り返していると、関節炎を発症して次第に痛みが強くなり日常生活の支障をきたすため、早期に正しい治療を行うことが大切です。

 

今回は、犬の膝蓋骨脱臼の診断方法や代表的な手術方法などを解説します。


 

■目次
1.好発犬種と原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

好発犬種と原因


膝蓋骨は大腿骨の真正面に位置する滑車溝という“溝”の中にはまっており、この溝を上下に移動します。溝の深さが遺伝的に浅いと、少しの動きで膝蓋骨が脱臼してしまいます。

そして膝蓋骨脱臼には、膝蓋骨が身体の内側方向に外れる「内方脱臼」と外側に外れる「外方脱臼」があります。

 

内方脱臼の好発犬種はチワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザー、パピヨンなどの小型犬です。

そして、外方脱臼の好発犬種ゴールデン・レトリバーやセントバーナードなどの大型犬、小型犬ではミニチュア・ダックスフンドが多いと言われています。

 

また、上記の遺伝的・犬種特異的な原因以外では、肥満成長ホルモンの分泌障害によって骨や筋肉の形成が正常に行われなかった場合や、高いところからの落下突然走ることで強い力がかかり膝蓋骨が外れるケースなどがあります。

 

 

症状


犬の膝蓋骨脱臼には重症度に応じて4つのグレードに分けられます。

 

グレード1

膝蓋骨は滑車溝に収まっていますが、手で膝蓋骨を押すと簡単に脱臼する状態です。明らかな症状は認めませんが、ごくまれに膝蓋骨が脱臼した瞬間にキャンと鳴いたり、一時的に足を気にしたりする様子などが見られます。

 

グレード2

膝蓋骨が不安定で、日常生活中に脱臼したり正常な位置に戻ったりを繰り返している状態です。脱臼していても手で簡単に正常な位置に戻せます。脱臼中はケンケン歩きをしたり、寝起き時に後ろ足を気にして挙げたり伸ばしたりする様子が見られます。

 

グレード3

膝蓋骨は常に脱臼しており、手で正常な位置に戻すことができるものの、またすぐに脱臼してしまう状態です。常に後ろ足を引きずって歩いたり、ケンケン歩きをしたりする様子が見られます。

また、関節炎が進行すると痛みも生じるため、散歩に行きたがらない、長い距離を歩けない、突然キャンと鳴く、膝からパキパキ音がするといった症状が見られます。

 

グレード4

膝蓋骨は常に脱臼しており、手で正常な位置に戻せない状態です。グレード3の症状に加えて、大腿骨や脛骨の変形が重度になり後ろ足を伸ばせない様子などが見られます。

 

そして膝蓋骨の脱臼頻度が多くなると、膝関節内の前十字靭帯と呼ばれる後ろ足を支える組織に大きなストレスを与え、前十字靭帯断裂のリスクや、骨を変形させる危険性があります。

 

 

診断方法


上記のような症状が見られ、膝蓋骨脱臼が疑われる場合は以下の検査を行います。


院内で歩行の様子を確認する跛行検査
・獣医師が実際に身体に触って骨や膝蓋骨、筋肉、靭帯などの状態を確認する触診 (=整形学的検査)
膝関節の状態をレントゲン検査で評価する など


中でも、レントゲン検査は手術の計画を立てるための詳細な計測のために重要な検査です。

 

治療方法


膝蓋骨脱臼の治療には外科手術か、手術をせずに現状を維持する保存療法があります。

外れた膝蓋骨を整復する方法は基本的に外科手術が推奨されていますが、グレード1や一部のグレード2の症例では以下の保存療法を行います

 

〈保存療法〉

・体重管理
・激しい運動を控える
・関節炎予防のサプリメントや抗炎症剤、鎮痛剤などを服用する薬物療法
・自宅の床を滑りにくくするなどの環境整備

そしてグレード3〜4の場合や、グレード2でも何度も再発を繰り返している場合は外科手術が必要になります。なお、膝蓋骨脱臼の手術法はいくつかあり、膝蓋骨脱臼のグレード、膝関節の状況や年齢など様々な要因を考慮して最も適した術式を選択する必要があります。

 

当院で手術を行う場合、滑車溝造溝術関節包の縫縮術脛骨粗面の転移術の3種類の術式を実施しております。上記3つの術式で95%程度の症例は治療できますが、まれに大腿骨が湾曲しているケースがあり、その場合は同時に骨切りも必要となります。骨切りには高い技術が必要となるため、他の病院では対応できない場合もありますが、当院では骨切になった場合も対応可能です。

 

 

予防法やご家庭での注意点


膝蓋骨脱臼を予防するためには、肥満の場合はダイエットをして膝関節への負担を減らす、ご自宅がフローリングの場合はカーペットなどを敷いて滑りにくくする、激しい運動(高いところへジャンプしたり、クルクルと回るような回転運動など)を避けることが大切です。

 

ご家庭では散歩時の様子や歩き方を注意深く観察し、気になることがあればすぐに獣医師に相談してください。

 

 

まとめ


小型犬は若齢の頃から膝蓋骨脱臼を発症するケースが多く、飼い主様が気づかないうちに進行して歩行に異常が見られることがあります。

早期発見、早期治療を行えば手術を行わずにすむ可能性が高くなるため、半年から1年に1回は獣医師による健康診断を受けましょう



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