2024.05.27
ACS letter 2024.5 フィラリア症について
目次
1.原因
2.ライフサイクル
3.症状
4.治療方法
5.予防法
・原因
フィラリア症(犬糸状虫症)とは寄生虫の仲間である犬糸状虫(Dirofilaria immitis)という線虫によって引き起こされる病気で、獣医学において代表的な循環器・呼吸器に関わる疾患です。犬糸状虫は主に犬科(犬、タヌキ、キツネなど)やイタチ科(フェレット、ミンクなど)に寄生するが、猫にも寄生する事が確認されています。
蚊によって媒介されるため、予防のためには蚊が出てくる時期がとても重要となります。また、フィラリアは日本全土にいるとされています。
・ライフサイクル
まず、蚊がすでにフィラリアに感染している犬から血を吸います。
この時に蚊の体内にフィラリア(フィラリアの赤ちゃんであるミクロフィラリア;以下Mf)を取り込みます。
↓
Mfは蚊の体内で犬に感染可能な幼虫の姿(以下;L3)まで成長し、次の吸血の機会を待ちます。
↓
L3は吸血の際に蚊から他の犬へと移行します。
↓
犬の皮下に侵入したL3は、皮下や筋肉組織で発育し、L5という体内移行ができる形態となり、いよいよ
血管に入り右心室に移動し、感染後6ヶ月程で成熟虫となります。フィラリアの成虫は白く『そうめん』のような形状をしており、成熟したメスはMfを排出します。このMfを蚊が吸うことによって感染は繰り返され、広がっていきます。
・症状
未成熟虫により感染3−4ヶ月後には肺動脈に増殖性や閉塞性の病変が起こすことがあります。成虫の寿命は5−6年と長く、長期間の寄生により慢性の肺動脈・右心系障害が引き起こされます。
・運動不耐性(散歩を嫌がる、お迎えに来ない、遊ばない、疲れやすいなど)
・呼吸器症状(呼吸が浅く早い、咳が出る、粘膜が青白い)
・腹水・浮腫(お腹がぽっこりしている、体が浮腫んでる)
・血尿(おしっこが赤い)
・黄疸(白目や口の粘膜が黄色い)
などの症状が起こる可能性があります。
・予防
病気を媒介する蚊に刺されないようにする環境作り、例えば蚊が繁殖可能となる環境を作らない事や蚊の活動が盛んとなる時期や時間帯、場所での飼育、同伴を避ける事は一番の予防につながるものの、地球温暖化が進むにつれ蚊の生息域と活動期間の拡大が考えらる今、現実的には困難であり、感染の予防は不完全であります。したがって抗幼虫剤の投与によって蚊のライフサイクルを断ち切ることが推奨されます。なお、フィラリアのお薬の投薬期間は地域の気温差によって違います。神戸の地域では5−12月までが投薬期間となっておりますので、寒くなってきたからと油断せずしっかりと予防を行いましょう。
参考資料;
- https://n-d-f.com/common/ebook/parasites/html5.html#page=1
- https://n-d-f.com/filaria/#:~:text=%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E7%97%87%E3%81%AF%E3%80%81%E8%9A%8A%E3%82%92,%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%8C%E5%87%BA%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
- https://filaria.jp/html/hdu/kinki/index.html#hyogo
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