2023.03.16
ACS letter 2023.3 ㊼去勢・避妊手術について
はじめまして、7月からACSの一員となりました、獣医師の内田です。
どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、わんちゃん・ねこちゃんを新しく迎えた方から「去勢・避妊手術っていつ頃するの?」「そもそも必要でしょうか?」と様々な質問を受けることが多く、改めて去勢・避妊手術が必要かどうか、メリット・デメリットについてもお話しさせていただきたいと思います。
*去勢・避妊手術の目的*
去勢・避妊手術は、望まない妊娠や出産を避けることに加え、わんちゃん・ねこちゃんの将来の病気を防ぐこともでき、発情に伴う行動を抑制することで飼い主様との快適な日常生活にも繋がります。
*わんちゃんの去勢・避妊で予防できる病気や行動*
男の子・・・ 会陰ヘルニア、前立腺疾患、精巣腫瘍などの病気
マーキング、マウンティングの抑制
女の子・・・ 乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、卵巣・子宮の病気など
*避妊手術については、初めての発情より前に手術を行うと、乳腺腫瘍の予防率は99.5%と言われています。
1回目の発情後には92%、2回目の発情後になると74%と予防率が下がってしまうので、タイミングが大切です。
*ねこちゃんの去勢・避妊で予防できる病気や行動*
男の子・・・ 交尾により伝染する感染症、マーキング(スプレー行動)
女の子・・・ 交尾により伝染する感染症、乳腺腫瘍、卵巣・子宮の病気など
*ねこちゃんの乳腺腫瘍は悪性であるケースがほとんどです。
避妊手術での予防効果は、6か月齢までに手術を行えば91%、12か月齢までなら86%と言われています。
2歳以降での手術だと発生予防効果はないという報告もあります。
*去勢・避妊手術のデメリット*
男の子・・・ 麻酔のリスク、肥満になりやすくなる
マーキングやマウンティングが抑制されないケースもあります
女の子・・・ 麻酔のリスク、肥満になりやすくなす
まれですが尿失禁を起こすケースもあります
*健康な動物での麻酔関連死亡率は、犬で 0.05%(2000頭に1頭)、猫で0.11%と報告があります。
麻酔のリスクを完全に防ぐことは難しいですが、手術前の検査をしっかりと行い、事前に麻酔計画を立てることで、全身麻酔のリスクを軽減します。
*去勢・避妊手術のタイミング*
男の子・・・ 成熟前の6~8か月齢がベストと言われています
女の子・・・ 犬種・個体差はありますが、初回発情は6~10か月齢で迎えることが多いです
乳腺腫瘍を抑える上で初回発情前をお勧めしていますが、獣医師にご相談ください
*避妊手術をする時期になっても乳歯が残っている場合は、乳歯を手術時に抜歯することをお勧めしています。小型犬では乳歯が自然に抜けず、残ってしまうケースが少なくありません。放置しておくと、歯並びに問題が起きたり、汚れがたまりやすく歯周病の原因にもなるので、適切な時期に抜歯することをお勧めします。
*手術前の検査*
手術は全身麻酔で行うため、手術前には血液検査等で動物の状態をチェックします。
ねこちゃんや中年齢以上のわんちゃんに対しては心臓検査も行います。万が一異常がみつかった場合には、手術を延期し治療後に手術を行う可能性もあります。
全身麻酔のリスクを軽減するために、当院ではこれらの術前検査を実施しています。
おうちに迎えてすぐに、去勢・避妊手術について考えるタイミングがあり、体の小さい子への手術は心配、病気じゃないのに手術をする必要があるのかと、可愛いわが子だからこそ、いろいろと考えて悩んでしまうことは多いと思います。
お気軽にご相談ください。
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