2023.12.28
ACS letter 2023.12 症例紹介(口腔外科)
こんにちは。
12月のACS letterを担当します荒濵です。
もう12月ですね・・・2023年も終わりに近づき、新年を迎えようとしています。皆様にとってこの一年はどんな一年でしたか?私は、日々の診療に追われながら、この一年で少しは成長したのだろうか?クリアするべき課題は何なのだろうか?そんなことを考えながら、毎日を過ごしております。
さて、12月のACS letterは、「口腔外科」に関する症例紹介です。
ワンちゃんネコちゃんの口腔外科ってどのような処置をするイメージでしょうか。
例えば、「成長の過程で上手く抜けなかった乳歯の抜歯」、「長年蓄積した歯石の除去」、「歯肉炎に伴い動揺している歯の抜歯」、「口の周りにできた腫瘤の切除」などなど、比較的身近に出会う印象を持っている方が多いのではないでしょうか。
今回は、顎嚢胞を有するワンちゃんの1例を紹介したいと思います。
その子は、今年の9月に歯肉の腫れを他院で指摘され当院へ来院されました。当院での診察で、当該箇所には本来生えていなければならない永久歯が見当たらず、歯茎の中に歯が残っているのか、腫瘤が形成されているのかについて、後日全身麻酔下で歯科用レントゲンを用いて確認することになりました。
歯科専門の先生に、今回撮影したレントゲンと問題となっている部位の写真を見ていただいたところ、「含歯性嚢胞」と言い、顎の中のまだ生えてきていない永久歯の周囲に嚢胞(液体が袋状に貯留したもの)が形成されているという状態だということがわかりました。顎の中に形成される嚢胞には、下図に示すとおりに分類分けがされています。
図 顎嚢胞の分類
出典:イラストを読む! 犬と猫の臨床歯科・口腔外科 1次診療ここまでできる 渡邊一弘
基本的には無症状であることが多いのですが、将来的には顎の骨を溶かしていき、さらに感染に伴う炎症を引き起こす可能性があるため、その先生に当院へ来ていただき嚢胞摘出とそれに伴う永久歯の抜歯という約4時間にも及ぶ大きな手術をしていただきました。
顎の骨の中の嚢胞
術後の様子
幸い今回手術したワンちゃんは、発見と処置が早かったため顎の骨が溶けて割れるといった悲惨な状況には至りませんでしたが、このように症状がはっきりとしない疾患でも手遅れになると取り返しのつかない事態を引き起こすことがあります。
今回の記事を読んでいただき、愛犬・猫のお口を診て、歯茎が腫れている、大人の歯が生えていない等の異変に気付かれましたら、毎月、歯科専門の先生が当院に来てくれることになりましたので、お気軽に相談ください。
それでは皆様、良いお年を迎えて下さいね。
神戸三宮元町
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