2023.11.16
ACS letter 2023.11 猫の心筋症(肥大型心筋症)
こんにちは。
今月のACS letterを担当させていただきます、獣医師の内田です。
今回は、猫の心臓病の中で最もよく認められる肥大型心筋症についてお話させていただきます。
肥大型心筋症とは、心臓の筋肉が内側に向かって厚くなり、それによって心室が狭くなってしまうことで体に十分な血液を送ることができなくなってしまう病気です。
初期では無症状ですが、進行すると肺に水が貯まる肺水腫が認められるようになったり、拡張した左心房内での血液うっ滞による血栓形成や、血栓塞栓症が発生することがあります。
後発品種として、メインクーンやラグドール、アメリカンショートヘアー等が知られています。メインクーンやラグドールでは、特定の遺伝子(ミオシン結合蛋白C)の変異による発生が証明されており、遺伝子検査をすることもできるようになっています。
発症の平均年齢は6歳(3ヶ月齢~17歳)で、雄に多いとされています。
3ヶ月齢~とあるように、若齢での発生があるため、避妊手術・去勢手術を実施する月齢でも考慮しなければならない疾患です。このため当院では、猫ちゃんの避妊手術・去勢手術を実施する前には、心臓検査を実施しています。
【症状】
通常、この病気の初期は無症状です。
肥大型心筋症の約30~50%の症例は、病院への来院時に無症状であるという報告があります。
症状が出たときには、すでに病態がかなり進行した状態である可能性があります。
進行してくると、左心房への血液のうっ滞が生じ、左心房が拡大し、肺水腫や胸水などのうっ血性心不全症状が現れます。また、血液がうっ滞した左心房内で形成された血栓が、動脈血栓塞栓症の原因となり、突然の後ろ足の麻痺や心筋梗塞による突然死、急性腎不全などを起こす可能性があります。
【治療】
薬による内科的治療がメインとなります。
定期的に検査をしながら、状況に応じて薬を調整しながら維持していきます。
動脈血栓塞栓症が発生した場合、発生から早期であれば、緊急的に全身麻酔をかけて血栓の除去を実施することもあります。
猫の肥大型心筋症は、見た目に症状が出ない患者さんが多く、必ずしも心雑音などの心音異常を示さないので、たとえ定期的に病院に通われている猫ちゃんでも、精密検査をうけていないと見逃されやすい病気です。そのため、胸水や肺水腫・血栓症などの症状がでてからはじめて気づかれることも多くあります。
若齢の猫ちゃんでも発生の可能性がありますので、ぜひ一度心臓検査を受けることをお勧めします。
整形外科クリニック
神戸三宮元町
ACS動物外科クリニック
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