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動物病院+トリミング
神戸三宮元町にあるACSです。

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2022.04.06

ACS letter 2022.4 ㊵心臓病と検査について

こんにちは。今月のACS letterを担当させていただきます獣医師の鎌田です。

 

私事ですが、10月から月に1回奈良の動物病院にセミナーを受けに行っています。

全4回の講義が終わり、後は修了試験を残すのみになりました。

はるばる奈良に通ってまで習得したかった技術、それは“心エコー“です。

エコーは小動物臨床において欠かせないツールの1つですが、心臓検査においても非常に重要な役割を担っています。

今回は心臓病と検査についてお話をさせていただきます。

 

臨床現場で心臓病のワンちゃん・ネコちゃんに遭遇する機会は意外と多いです。

中でも「僧帽弁閉鎖不全症」は特に高齢のワンちゃんで良く見る疾患です。

 

<心臓の断面図>

 

 

 

僧帽弁閉鎖不全症

心房と心室、心室と動脈の間にはそれぞれ弁があり、押し出した血液が戻らないように制御しています。

僧帽弁閉鎖不全症は、左心房と左心室の間にある僧帽弁が変性してうまく閉じなくなる疾患です。

僧帽弁がきちんと閉じないと、左心室から左心房へ血液が逆流して、左心房の内圧が上昇します。

進行して左心房がパンパンになると、肺静脈圧も上がって肺で血液のうっ滞が起こります(=肺水腫)。

 

症状が大きく出ていない内に治療を開始すれば比較的長期間向き合っていけることが多い疾患ですが、いったん肺水腫になると、内科的治療を行っても1年以内に80%が亡くなるという文献もあり、早期発見・早期治療がとても重要になります!

 

当院では、ACVIM(アメリカ獣医内科学会)のガイドラインに則って、僧帽弁閉鎖不全症の診断を行っています。

ガイドラインでは病期をステージA、B1、B2、C、Dに分類し、ステージB2からの薬物治療を推奨しています。

そしてステージB2の基準は以下の様に決められています。

 

 

・心雑音 : ≧3/6 

・心エコー検査 :  LA/AO ≧ 1.6

 LVIDDN ≧ 1.7

・胸部レントゲン検査 : VHS ≧ 10.5

 

・心雑音は強度によって「注意深い聴診でのみ聴き得る雑音(第1度)」から「聴診器なしで聴き得る雑音(第6度)」の6つに分類されています。

≧3/6とは第3度以上の雑音であることを示します。

 

・「LA(左心房)/AO(大動脈)」では左房サイズを評価します。

僧帽弁逆流があると左心房が拡大しますが、大動脈の直径は変化しないので、左房径を大動脈径で割った数値を指標として使います。LA/AOが1.6以上であることがステージB2以上と判断する基準の1つになります。

(下の写真ではLA/AOが1.72で左房が拡大していることが分かります。)

 

 

 

・LVIDD(左室拡張末期径)は左室拡張の指標です。これは体重ごとに決められた基準値と比較して評価しますが、数字が大きいほど左室の拡張が重度であることを示します。

(下の写真ではLVIDDが26.5mm(24.4mm以下で正常)で、左室も拡張していることが分かります。)

 

 

 

・VHS(椎骨心臓サイズ)は心臓の縦径と横径を各々計測して、第4胸椎の頭側から椎骨何個分に相当するか計測して合計する方法です。これが10.5以上であれば心臓が拡大している(=ステージB2)と判断します。

(下の写真では、オレンジの線が椎骨約6個分、緑の線が椎骨約5.2個分で、VHSは11.2となり、心臓はかなり拡大しています。)

 

 

これらを総合的に評価し治療をしていきますが、いったん変性した弁が元に戻ることはないので、薬を飲んでも完治することはありません。

ただ、治療によって症状が改善したり、進行を遅らせることは可能です。

 

ちなみに僧帽弁閉鎖不全症は小型の高齢犬に多い疾患ですが、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは若くして発症する例が多いことで知られています。

 

さて、早期発見・早期治療が重要だとお話ししましたが、早期発見のために飼い主様に気を付けて見ていただきたいポイントがあります。

 

① 咳をしていないか?

運動時・興奮時や夜間・朝方に乾いた咳をするようになった

 

② 運動不耐性・易疲労性がないか?

散歩や運動を嫌がるようになった、帰宅した時に今までお迎えに来ていたが来なくなった等

 

③ 呼吸促拍や呼吸困難がないか?

呼吸が速い、呼吸がゼーゼーと苦しそう

※呼吸が速いと思ったら、寝ている時など安静時に胸の動きを数えてみてください。

(1分間に犬≧40回、猫≧30回だと肺水腫になっている可能性があります)

 

 

今回はワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症についてお話ししましたが、ネコちゃんの場合は「心筋症」が多く、好発種はメインクーン、アメリカン・ショートヘアー、ペルシャなどです。

こちらも咳や呼吸困難といった症状が出ますので、運動後に開口呼吸をしているようなことがあれば、早めに検査を受けられることをおすすめします。

 

「そういえば咳が増えたかな・・・」「以前より元気がないかも・・・」等、気になる点があれば、まずはお気軽にご相談ください!

 

 

 

 

 

 

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