2021.06.17
ACS letter 2021.6 ㉞膝蓋骨脱臼
こんにちは、今回のACSレターを担当するのは獣医師の有馬です。
日本は、小型犬が多いため、膝蓋骨脱臼は診察の機会がもっとも多い整形外科疾患です。また、私が整形外科を勉強するためにアメリカへ留学していたこともあり、近隣の動物病院からも多くの症例が集まってきます。
最近では、飼主さんもよく勉強されているので、“パテラ”(Patella=膝蓋骨)が悪いので診て欲しいと問い合わせがあります。
そもそも、膝蓋骨脱臼とは??
簡単に言うと、膝が溝から外れることです。
電車がレールから外れて無理に動いていると説明すると納得されます。
94%が内側に脱臼し、原因として大腿骨周囲の形態異常が関わってきます。
1.大腿四頭筋の不十分な発達
2.膝蓋骨高位(膝のお皿が上に移動し安定していない)
3.溝が浅い(成長段階で膝蓋骨の圧迫がなく、結果的に溝が浅くなる)
4.大腿骨と大腿骨頭の角度の問題
様々な要因が関係しています。
*好発犬種:トイプードル・ポメラニアン・チワワ・ヨークシャーテリア
小型犬がほとんどです。フレンチ・ブルドック、柴犬でも時々見られます。
*手術or保存療法
飼主さんが一番知りたいことは、この子に手術が必要なのか?それとも内科的に手術なしで過ごすことができないか? この判断をして欲しいと多くの方が来院されます。
次のポイントを診て、手術が必要かどうかを判断します。
1.年齢または月齢
2.症状の有無(足を上げる、痛み、座り方がおかしいなど)
3.発症頻度・重症度
4.骨の変形の程度(レントゲン・触診)
5.他の病気の存在
臨床症状(歩行時、関節を動かした時の痛み、後肢の変形)がない場合は、まずは、保存療法を行っていきます。
*保存療法とは
1.体重の管理(肥満は足への負担を増大)
2.環境の改善(滑らない環境での生活、散歩の行い方の
指導)
3.機能維持のためのリハビリ
4.疼痛管理(お薬・サプリメントなど)
これらの保存療法に反応しない場合は、手術を考える必要があるでしょう。
*成長期の小型犬(6ヶ月未満)は要注意!
症状がなくても、成長期の小型犬に膝蓋骨脱臼がある場合は、短期間で骨が湾曲する場合があるので要注意です。症状(足を痛がる、足を挙げるなど)がなくても、決して「無治療で大丈夫、手術は入らない」とは言い切れません。
当院では、成長期が終了するまで1-2ヶ月に1回の頻度で膝の様子を診ていきます。
臨床徴候の有無、発生の頻度、足を挙げる様子、足の変形程度などを慎重に判断し、適切な時期に手術に介入することで、大腿骨を切り調整するような大がかりな手術を回避することができます。
*中~高齢で急に膝が痛くなった場合
パテラがあると知ってはいたが、今まで足を挙げることもなく普通に歩いていた子が急に膝を痛がる時は前十字靱帯損傷が起きている可能性があります。慢性的に膝に負担がかかっていたことが原因の一つでしょう。前十字靱帯損傷は、全く違うことが膝の中で起きていますので、今までとは違う歩き方に気づかれた場合は早めに受診してください。
犬の平均寿命は15歳と言われています。飼主様とワンちゃんに取って一番いい方法を見つけていきましょう!
いつまでも元気に走り回ってもらいたいですね!
足がおかしいと思った時は、お気軽にご相談ください。
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神戸三宮元町
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