2020.06.11
ACS letter 2020.6 ㉒外耳炎について
こんにちは。獣医師の下村です。
今回はワンちゃんの外耳炎についてお話させていただきます。
これから高温、多湿の季節になると、耳のトラブルとして外耳炎があります。
犬猫の外耳炎は非常に多い疾患の一つです。
病院の診察時に偶然に発見される軽度のものから、痛みを伴うもの、激しい痒みやただれ、悪臭を放つなど重度のものまで様々です。
首を振ったり、後ろ足で耳の後ろを掻いたりなどの症状もみられることがあります。
放置しておくと慢性化してしまいます。
*犬の耳の構造*
原因
① 酵母様真菌(マラセチア)の増殖(湿った黒褐色の耳垢と発酵臭を伴う)
マラセチア菌は常在菌で健康な犬猫に普通にいる菌。脂分を好み高温多湿の環境で増殖
② 垂れ耳の犬やフレンチブルドッグなど短頭種にみられる狭い外耳道
③ 細菌感染
④ 耳ダニ症
⑤ アトピー性皮膚炎や食物アレルギーのようなアレルギー疾患
⑥ 耳道内の腫瘍やポリープ、異物
⑦ 耳掃除のやりすぎ
治療
一般的には、耳洗浄を行い、原因となっているものに対して有効な薬、点耳薬を使います。
腫れなどが酷く、痛みがある時は内服で腫れや痛みを和らげてから耳にアプローチしていきます。
次のような症状や仕草が見られたら、早めの受診をお勧めします。
・黒く乾燥して耳垢:耳ダニで多くみられる
・湿った黄色い悪臭のあるもの:細菌感染の可能性
・茶色のワックス状の耳垢:マラセチア感染でよくみられる
・耳が痛そう
・頭をよく振る
・頭を傾ける
・耳垢が多くなる
・悪臭がする
耳毛の多いワンちゃんは定期的に病院などで耳毛の手入れをしてもらい、通気性をよくしてあげましょう。
通常の耳垢はそれ自体自浄作用があるので、頻繁に外耳道を掃除する必要はありません。
耳の汚れが気になって先の固い綿棒などで掃除をするのは、返って耳道内を傷つけしまうこともあるので気を付けてください。
当院では除去困難な耳垢は耳垢除去剤を点耳後、微温湯で洗浄を行います。
洗浄しながら局所抗菌薬治療に適した耳道内環境に整えるノンアルコールの洗浄剤も使用します。
又アルコールタイプの洗浄剤で脂漏性のしつこい耳垢に対しても優れた除去作用のある洗浄剤もあります。
日頃の耳ケアにもご使用いただけます。
治療薬;抗生剤、抗真菌薬、ステロイドが一緒になった液体状の点耳薬やクリーム状の点耳薬
5日間のみ毎日、1回連続使用するものなどがあります。