2019.06.07
ACS letter 2019.5 ⑪熊本地震から3年の今
こんにちは、獣医師の有馬広治です。
先日、熊本での“災害時に人とペットがいかに安全に避難をするか”の勉強会に参加してきました。
皆さん、熊本地震の事を覚えていますか?
私は、正直に言って最近、熊本の事を考えることはなかったです。
現在の熊本の様子を見てとても申し分けない気持ちになりました。
3年経った今でも、仮設住宅に住んでいる方が大勢いるのです。
3年前の4月14日、熊本でマグニチュード6.5の地震が起こりました。
熊本には今まで大きな地震はなく、それを県のメリットとして企業への誘致活動を行っていたくらいです。
県民の多くは、地震のない安全地域だと信じていました。
PM9時26分の出来事だったので、熊本の人は不安と恐怖の中で長い夜を過ごしました。
しかし、その後、本震がくるとは多くの人は考えていませんでした。
2日後の16日の夜中1時25分、今度はマグニチュード7.3の本震がきたのです。
多くの家屋は崩れ、あの熊本城も大きな被害を受けました。
その後も、震度6以上の地震は7回あり、余震は2254回(29年末まで)ありました。
最大避難者数は18万4千人、人口の10.3%にも及び、死者は関連死も含め264人となりました。
皆さん、想像してください。今、大きな地震が起きました。
家屋は崩れ、家の中はガラスが飛び散り、家具も倒れ、いつ次の余震がくるかわからない危険な状況です。
もしかしたら、家族の誰かはケガをしていることもあるでしょう。
さあ、どこへ避難しますか?
そんな事は分かっているよ、近くの小学校か公民館でしょ!
では、聞きます。
その場所は、ペットも一緒に同行避難ができる場所ですか?
あなたの大切な家族の一員であるワンちゃん、猫ちゃんは連れていけない避難所かもしれません。
あなたは、大切なペットを崩れそうな家に置いて避難ができますか?
平成25年4月に環境省は、災害時の避難はペット同行が望ましいとするガイドラインを策定し、自治体や飼い主に対して準備を促しました。
これは、2011年に発生した東日本大震災の教訓から、災害時はペット同行で避難する方が避難後避難者の心的ストレスが大きく軽減することや、逃亡したペットの野生化による狂犬病や繁殖のリスクがあると報告をもとに作成されました。
環境省はガイドラインにペット同行が望ましいとは言っていますが、実際は各自治体の判断になりますので、同行避難ができない所が多いのです。
今回の勉強会に参加して強く再認識したことは、準備の大切さです。
事前にペットのために用意しておきたい物リストは、ACS Letter 2018.10月号
“もしもの時の防災対策”を再度、見直してください。
物資の準備も大切なのですが、日頃からペットの訓練(しつけ)もとても重要です。
基本動作として必ず習得したいことは
1. 無駄吠えをしない
2.“待て”ができる
3.トイレトレーニング
4.クレートで寝ることができる
避難所に行けば、動物が好きな人ばかりではありません。
上記の基本動作ができれば周りの人への迷惑も軽減でき、ワンちゃんもストレスが少なくなります。
避難生活が長くなれば、犬の鳴き声、臭気がお互いのストレスの原因になります。
そして、ご自身で確認してください。
★災害時の避難場所
★その避難場所はペット同行避難ができるのか。
多くの避難所はペット同行避難ができません。その現実に気づいてください。
行政は、まず人の救済を優先します。お年寄り、子供、妊婦、障害者、病気の方など優先して命の安全を確保します。
残念ながら、動物の事まで考えている自治体は少ないです。
災害時は、“自助” 自分の命は自分で守ることが基本になります。
そのためには、しっかりとした事前準備が不可欠です。
次に“共助” 隣人、町内、獣医師会、NPOなどが協力し避難生活を乗り切らなければなりません。
そのためにもペットが迷惑にならないように訓練(しつけ)が必要です。避難生活が長くなれば“公助”行政との連携が必要です。
行政を動かすのは、人の声です。
どうして、ペット同行避難ができないのか、災害が来る前から行政に問いかけましょう。
熊本の被災者の方も言ってました。「まさか、熊本に大地震がくるなんて….」
未来の私たちは言ってるかもしれません。
「まさか、また、神戸に大地震がくるなんて…」
あなたは、あなたの愛する家族をワンちゃん、猫ちゃんを守れますか?