2019.11.20
ACS letter 2019.11 ⑯犬のてんかん
こんにちは。
獣医師の下村です。
今回は犬のてんかんについてお話します。
ワンちゃんが急に痙攣をおこしたり、硬直したり、泡を吹いたりしたら、それはてんかんかもしれません。
飼い主様はこれらの出来事をてんかん、発作、ひきつけ、痙攣など表現されます。
犬のてんかんってどんな病気?
てんかん発作の原因は大脳皮質といわれる大脳表面のしわの部分に異常興奮が生じることで発生すると考えられています。
発作とは突然生じ、すぐに終わる一過性のイベントのことで、てんかん発作と反応性発作があります。
反応性発作:中毒疾患、低血糖、肝臓病、腎臓病など脳以外の病気で起こす発作のことをいいます。
てんかんは、特発性てんかんと構造的てんかんに分類されます。
① 特発性てんかん(原因の特定が難しいてんかん)
様々な検査(身体検査、神経学的検査、血液検査、尿検査など)をしても異常がなく、発症年齢が6ヶ月以上6歳以下である。
遺伝的な要素が関係しているともいわれています。
② 構造的てんかん
脳の外傷や脳腫瘍、脳炎、水頭症などによって誘発されるてんかん発作を示すもの、画像診断(レントゲン、MRI、CT)などによって確認されます。
てんかん発作には次のようなものがあります。
脚など体の一部がピクピクする程度の小さなもの(焦点性発作)、意識を失って全身が痙攣するようなもの(全般発作)まで様々です。
焦点発作
脳の一部だけが電気的に興奮状態になり、そこと関係する体の一部に変化が起きている状態です。
意識に関係する脳の部分が興奮状態になると、顔面がけいれんしたり、大量によだれを流したり、呼びかけても反応せず瞳孔が開いた状態になったりします。
全般発作
問診:病院に来られた時やお電話をいただい時には発作が終わっていることがほとんどなので、飼い主様からの情報がとても大事になります。
① 現在の年齢は?
② 初めて発作を起こしたときの年齢は?
発作の様子
*どんな症状だったのか?全身性なのか、部分性なのか?
( 硬直、四肢をバタバタさせる、よだれが出る、失禁や脱糞する)
*初めて起こしたのか?それとも以前にも起こしたことがあったか?
*1回の発作はどのくらいの時間続いたか。
*発作と発作の間隔はどのくらいか
*発作を起こす前に何かきっかけはなかったか。
*発作後はどういう状態か?すぐに普段通りに戻るか?
原因となる可能性のある要素の確認
*特殊な食べ物を与えなかったか?間違って変なものを食べてないか?
*ワクチンは接種しているか?
*過去に頭部外傷はなかったか?
など色々とお聞きします。
発作があった日や発作の時間、余裕があれば様子の動画を撮っておいていただくと、病院に行った際にとても役立ちます。
特に注意すべき発作として重積発作と群発発作というのがあります。
重積発作:1回のてんかん発作が5分以上続く、一日に5回以上のてんかん発作、あるいは1回目の発作が完全に回復する前に次のてんかん発作が始まり5分以上にわたり
反復するもの。
群発発作:1日に2回以上の発作がおこる場合
これらの症状が見られたら、すぐに受診されることをお勧めします。
発作時に気を付けること
発作時には心配で、つい体を触ったり、呼びかけたりしてしまいがちですが、余計な刺激を与えることになりますし、飼い主様もケガをする可能性がありますので静かに見守って下さい。
また、まわりに物がある場合は、ワンちゃんがケガをしないようによけてください。