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動物病院+トリミング
神戸三宮元町にあるACSです。

Blogブログ

2019.01.08

ACS letter 2019.1 ⑦去勢手術は必要?

明けましておめでとうございます。獣医師の有馬です。

皆様にとって素敵な1年になりますよう、家族の一員である犬ちゃん・猫ちゃんの健康管理にACSスタッフ一同尽力したいと思います。

 

 

さて、前回、避妊手術のメリット、デメリットについてのお話でしたので、今回は、男の子の去勢手術についてお話したいと思います。去勢手術は、精巣を摘出する手術なので、飼い主さんの中で男性の飼い主さんが嫌がる傾向にあります。自分自身が去勢されることを考え、ためらうようです。僕も、男としてわからないでもないですね…

 

さて、いつ頃に手術を考えればいいでしょうか?

 

小型・中型犬は、6~12か月くらいに性成熟します。この時期に、自分の存在をアピールするためにマーキングを始めます。できれば、マーキングを始める前に去勢手術を受けるのがいいでしょう。大型犬の場合、骨のバランスを崩さないために生後10か月以降の去勢手術を考えましょう。

 

では、去勢手術でのメリットはなんでしょうか?

 

1. 病気予防

 

前立腺肥大
人間でもそうですが、シニアになってくると前立腺の病気がでてきます。犬ちゃんの場合も10歳くらいになってくると前立腺肥大になる犬が多いです。前立腺肥大になると、おしっこが出にくい、直腸を圧迫し排便時に痛みなどの症状がでます。
前立腺に膿が貯まり(前立腺のう胞)、痛み、発熱、血尿の症状が
出る場合もあります。
男性ホルモンが影響しますので、去勢手術をすることで
男性ホルモンが減り病気予防につながります。

 

精巣腫瘍
精巣が腫瘍化することにより起こる病気です。
特に、精巣が陰嚢(睾丸が入っている袋)に降りてない場合(潜在精巣)は、
正常な精巣に比べて腫瘍化するリスクが10倍以上高いと言われています。睾丸が降りてない、潜在睾丸の犬ちゃんは、前向きに去勢手術を考えるべきだと思います。去勢手術は、精巣を取り除く手術なので、精巣腫瘍の心配はなくなります。その他の腫瘍でも、男性ホルモンが影響する肛門周囲腺腫なども
去勢手術をすることで、男性ホルモンが抑えられ、発生率が低くなると言われています。

 

2. ストレス、攻撃性の軽減

 

日本の住宅事情から広い庭で自由にワンちゃんを走らせることはなかなか難しいと思います。私もマンションでの生活ですので、できるだけ数回散歩に連れて行きしっかり運動させエネルギーを発散させてあげたいのですが、雨降りの時は行かなかったり、仕事で遅くなると散歩に行けなかったり、運動量は足りてないのだろうと感じています。
特に、去勢をしていないオス犬は、犬種に関わらずかなりの運動量を必要とします。散歩だけではエネルギーを発散できない場合、ストレスから攻撃性が増したり、ひどい場合は自傷行為に至ったりします。去勢手術を受けることで、ストレスを軽減させて攻撃性を軽減できると考えられます。

 

 

3. 問題行動の軽減

 

早い時期に去勢手術を受けることで、マーキング、マウンティングなどの問題行動の軽減に効果があると言われています。

 

 

次に、去勢手術のデメリット

1. 太りやすくなる

去勢手術後は、男性ホルモンの分泌が減ります。男性ホルモンが減ることで、
発情に対する行動がなくなることで活動量も減り、基礎代謝も下がります。
去勢前と同じ食事を、同じ量与えていると太ります。去勢をした犬ちゃんのための
食事もありますので、体重管理がうまくいかない場合はご相談ください。

 

2. 全身麻酔のリスク

去勢手術は全身麻酔のもとで行われます。術前に、血液検査などを行い、健康である
ことを大前提として行う手術ではありますが、全身麻酔のリスクはゼロではありませ
ん。
では、実際に報告させている麻酔関連死亡率(健康な状態での手術)は

 

麻酔関連死亡率 犬・猫:0.05% (2000頭に1頭の確率)
人:0.01~0.05%

 

人よりも死亡率が高いのは、個体が小さい、短頭種(ブルドック、パグなど)など形態の違いがあることが考えられます。

 

愛犬に去勢・避妊手術を受けさせるかどうかは、非常に繊細な問題です。飼い主さんが正しい知識を持って、愛犬の幸せを考え判断していただければ、それが正しい判断だと私は思います。

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