2019.10.08
ACS letter 2019.10 ⑮巨大結腸症
こんにちは、獣医師の有馬広治です。
先日、何年も“便秘”で悩んでいる3歳の猫ちゃんが来院されました。
「なんだぁ便秘かぁ」と馬鹿にはできませんよ。
飼い主さんは、毎月のように、猫ちゃんを病院に連れて行き、浣腸をし、便をかき出してもらう事を2年間も続けているのです。
猫ちゃんはもちろん、飼い主さんも精神的にも疲弊され、金銭的にもこれが一生続くとなると大変なことです。
実際に撮影したレントゲン写真がこちらです。
便は、石のように固くなり、結腸全体に便が詰まり、長さでは40cm程、太さは3倍以上に膨れていました。
その時は、応急処置として鎮静下で3時間かけて便をかき出す処置を行いました。
一体なぜ、このような事が起きたのでしょうか?
原因:猫ちゃんの便秘は進行すると、結腸が太く動かなくなり巨大結腸症になる場合があります。
① 腸の動きが悪い場合:先天性、ホルモン異常、神経の病気など
② 便の排泄が悪い場合:骨盤骨折後の骨盤狭窄、結腸腫瘍、会陰ヘルニアなど
治療
内科的処置:浣腸、下剤、食事療法
外科的処置:骨盤を広げる手術、結腸切除術(機能しなくなった結腸を切除する手術)
今回の猫ちゃんの場合、子猫の時に交通事故による骨盤骨折がありました。
骨盤骨折は自力で治ったのですが、骨盤狭窄が残り、内科療法(浣腸、下剤、食事療法)では、管理が難しいとかかりつけの病院で言われ、当院に手術で治せるか相談にいらっしゃいました。
かなり重度の巨大結腸症と診断し、骨盤の一部を切除する恥骨坐骨部分切除を行うことになりました。
これは、術後のレントゲン写真です。
本来あるはずの恥骨と坐骨の一部がなくなっていることがお気づきでしょうか。
骨盤の狭窄を取り除き、便が通りやすくする手術です。
その後はスッキリ便が出るようになり、猫ちゃんも飼い主さんもニコニコで定期検査に通われています。
あなたのワンちゃん、ネコちゃんは毎日便をしていますか?
便秘は慢性化すると大変なことになります。おかしいと思ったら早めにご相談くださいね!