2022.09.07
ACS letter 2022.9 ㊸新しい医療機器のご紹介
こんにちは、今月のACS letterを担当させていただきます獣医師の鎌田です。
この度ACS動物外科クリニックでは、新しい医療機器を導入いたしました!
今回は、その紹介をさせていただきます。
その機器がこちらです↓↓↓
富士ドライケム IMMUNO AU10V (富士フィルムVETシステムズ)
これはB4サイズのコンパクトな装置で、「甲状腺機能」「副腎皮質機能」「ネコの炎症マーカーSAA」などが測定できます。
従来これらの項目は外部機関に依頼して検査してもらっていたのですが、この機械の導入により短時間で院内で結果を出せるようになりました!
「甲状腺機能」
※甲状腺ホルモンは体の代謝を促進する働きがあり、ワンちゃんでは低下症、ネコちゃんでは亢進症が多いです。
<甲状腺機能低下症>
基礎代謝量が低下し、気力や運動性の低下・肥満・脱毛などが認められます。
<甲状腺機能亢進症>
代謝が促進されすぎて怒りっぽくなったり、食欲が旺盛なのに痩せていって衰弱していきます。
便秘や下痢、心疾患や腎疾患、失明などを併発することもあります。
「副腎皮質機能」
※亢進症・低下症共にワンちゃんに多い病気です。
<副腎皮質機能亢進症(クッシング病)>
副腎皮質ホルモンの過剰によって、多飲・多尿、食欲亢進、腹部膨満、脱毛、
皮膚が薄くなるなどの様々な症状を示します。
<副腎皮質機能低下症(アジソン病)>
副腎皮質ホルモンの不足によって、食欲不振、体重減少、低血糖などが認められます。
副腎皮質ホルモンは体液のナトリウムやカリウムの濃度調節に関与しているため、低ナトリウムや高カリウム血症に伴って心機能や腎機能にも障害が起きます。
これらの病気はホルモン値を測定して診断し、治療開始後も定期的にホルモン値を確認しながら投薬を継続していくことになります。
今までは外部検査の結果を見てからお薬の量を決めていたので、後日再度来院していただきお薬を渡すことが一般的でしたが、これからはその日の内に適切な量のお薬をお持ち帰りいただけます。
メリットはそれだけではないですよ。
今回この機器を導入するに至った1番の目的は「ネコの炎症マーカーSAA」です!
<SAA(血清アミロイドA)とは>
炎症刺激によって血中濃度が著しく増加する代表的な急性期蛋白の1つです。
急性期蛋白の多くは、炎症反応を直接的に反映し速やかに変動することから炎症マーカーとして用いられます。犬の炎症マーカーとして有用な「C反応性蛋白(CRP)」はこれまでも院内で測定出来ていたのですが、ネコちゃんではCRPが炎症時にほとんど変動しないことが知られています。そして今までは外注検査でしか測定できなかった、ネコの炎症マーカーとして有用なSAAが院内で測定可能になりました。
<炎症マーカーを院内で測定できるメリット>
・炎症の早期発見
血液検査で一般的な項目に異常がなくても、SAAが高値ならどこかで炎症が起きていることが分かります。
炎症は、重症化すると全身へ波及して多臓器不全などの要因になることがあるので、早期発見・治療がとても重要です。
・モニタリング
その日の炎症の状態と挙動を把握できるので、「治療に反応しているかどうか」、「再発していないかどうか」等の評価ができます。
一般的にネコちゃんはワンちゃんに比べ体調不良を隠すのが上手で、症状も分かりづらいことが多いと言われています。もし飼い主様が何かいつもと違うと感じることがあれば、それは不調のサインかもしれません。そんな時はお気軽に当院にご相談ください。
整形外科クリニック
神戸三宮元町
ACS動物外科クリニック
Animal Care Station