2022.07.21
ACS letter 2022.7 ㊷TPLO
こんにちは、獣医師の有馬です。
今回は、前十字靱帯断裂の時に行う手術の一つTPLOについてお話します。
このTPLO手術は、アメリカで講習を受け免許を取得した獣医師しか行うことができなかった手術です。
私もアメリカ(オレゴン州)まで免許を取りに行きました。当時は、日本では10人しか免許をもっていませんでした。
今は免許をもっていなくても行える手術ではありますが、術者の技術と経験が術後の合併症につながってくる手術で難易度の高い手術です。
前十字靱帯が切れると脛骨が前に滑る動きが起きます。
歩くたびに前方へ押し出される動きが痛みになり関節の不安定から関節炎、半月板の損傷まで広がってきます。
そのような二次的な問題をなるべく最小限に抑えるためにも、早期診断と早期手術による関節の安定を行うことが必要となります。
従来の手術は、ナイロン糸を使い脛骨が前に滑る動きをなくすものでした。
この手術では大型犬になると力が強いため術後の回復が遅くしっかりとした歩行までは取り戻せない場合もありました。
TPLOは上の図のように、脛骨を円形のノコで切り、術前に計測した大腿骨と脛骨との角度(TPA:脛骨高平部水平角)から前方への力が最もゼロに近い角度へ骨を動かし特別なプレートで固定します。
この手術の素晴らしい点は、回復がとても早いと言うことです。
先日、行ったゴールデンレトリバーさんも手術の次の日の朝には足を着き始め、夕方にはしっかりとした歩行でした。
当院では、手術から3日目で退院するのが一般的です。
TPLOが発明され30年ほど経ちました。
前十字靱帯断裂の手術方法は色々ありますが、術後経過に関する報告が世界中でおこなわれており現在ではこのTPLOが最も成績の良い治療法とされています。
足の痛みで悩まれている時はどうぞお気軽にご相談ください。
整形外科クリニック
神戸三宮元町
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