2021.05.28
ACS letter 2021.5 ㉝ロコモーションシンドローム
はじめまして、今月のACS letterを担当させていただきます獣医師の鎌田です。
この春からACSの一員になりました、よろしくお願いいたします。
今回は、先日視聴したWebセミナーがとても面白くためになったので、そのお話をさせていただきます。
皆さんはロコモという言葉をご存じですか?
「ロコモーションシンドローム」(=ロコモ)は2007年に日本整形外科学会が提唱した比較的新しい概念で、運動器の障害のために移動機能が低下している状態をいいます。
ロコモは「メタボ」「認知症」と並び、「健康寿命の短縮」「ねたきりや要介護状態」の3大要因のひとつとなっています。
つまり、運動器疾患の予防・早期発見は健康寿命を延ばすことにつながるわけです。
これはヒトも動物も同様ですね。
ところがセミナーによると10歳以上の高齢犬における変形性関節症・変形性脊椎症の罹患率はかなり高く、小型犬で33.8%、大型犬では74.2%にもなるそうです。
犬種別にみると、ポメラニアン、シェルティー、コーギー、ラブラドールレトリーバー、柴犬、トイプードルは特に発生頻度が高いので注意が必要です。
<変形性関節症・変形性脊椎症>
変形性関節症は、関節のクッションとして働いている関節軟骨が徐々に削れてしまい、腫れや痛みが生じる疾患です。
進行すると関節周囲に骨棘(こつきょく)と呼ばれるとげが形成され、この骨棘が神経を刺激して更に痛みを引き起こします。
変形性脊椎症は脊椎のクッションとして働いている椎間板の弾力性が失われることによって生じます。
椎間板の変化が進むと椎体に骨棘が形成され痛みを引き起こします。
上の図は犬の背中を横から見たところです。
左から4番目と6番目のところに骨棘が形成されています。
こういった疾患は主に加齢によって発症しますが、肥満や不適切な運動(運動不足または過度な運動)も症状を出やすくしてしまいます。
先に挙げたように遺伝的に発生頻度が高い犬種もいますので、年齢に関わらず体重管理や適度な運動をしていくことが予防になります。
関節や脊椎が変形しても初期は無症状のこともあり、症状が出ていても見つけにくい場合が多いようです。
そこで、「どうぶつの痛み研究会」より発表されているチェックリストをご紹介したいと思います。
ぜひチェックしてみてください。
1つでも当てはまればロコモの心配があるかも?
早期発見が健康寿命の延伸につながります!!
1.散歩に行きたがらなくなった。
散歩に行っても走らなくなり、ゆっくりと歩くようになった。
2.階段や段差の上り下りを嫌がるようになったり、その際の動作がゆっくりになった。
3.家の中や外であまり動かなくなった。
4.ソファー・イス・ベッドなどの高い所への上り下りをしなくなった。
5.立ち上がるのが辛そうにみえる。
6.元気がなくなったようにみえる。
7.飼い主や他の犬と、またはオモチャなどで遊びたがらなくなった。
8.尾を下げていることが多くなった。
9.跛行(はこう)がある。
*足を引きずったり、ケンケンしながら歩く事、または足を全く地面に置かずに挙げながら歩く事
10.寝ている時間が長くなった、もしくは短くなった。
少しでも気になる症状があればお気軽に当院にご相談ください。
整形外科クリニック
神戸三宮元町
ACS動物外科クリニック
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